呼吸する家
「おひつ」のような家
幼い頃我が家ではおふくろがガス釜でお米を炊き、炊いたご飯を「おひつ」の中に移しかえていた。おひつの木の匂いがほんのりとしてあったかいご飯はとてもおいしかった。時間が経ってもおひつの中のご飯は、冷めてはいるもののやわらかく、香りが良くておいしく食べることができた。
今は保温機能の付いた炊飯器を使っている。我が家では火力にこだわってガス炊飯器にしている、炊きあがったご飯は自動的に保温されいつでもあったかいご飯が食べられる。とても便利にはなったが、おひつの木の香りはしない。それに時間が経つとご飯が乾いて硬くなる、においも臭くなってくる。細かい話しだが、電気を使って保温するので電気代もかかる。かと言って電気を切ってしまったら、中のご飯は蒸れてベトベトになりとても食べられる状態で無くなってしまう。おひつは電気が要らない。ご飯は冷めるがベトベトにならずおいしく食べることができる。
おひつは木でできていて、炊きたてのご飯が出す大量の湿気を吸いこみ蓄え余分な湿気は外へ放出し、時間が経ってご飯が乾燥してきたら、蓄えた湿気を出して乾燥を防ぐ。木は細かい繊維状になっていて、その中に大量の水分を含むことができる。更に乾燥した木は、抜けた水分の替わりに空気を含むので断熱性がある。そして吸った熱を蓄える蓄熱性も兼ね備える。木は調湿性と断熱性と蓄熱性を兼ね備えた理想的な素材である。そんな木でできているからおひつに入れたご飯は、冷めてもおいしく食べられるのである。
自分が住む家を考える時、おひつのような家に住んでみたいと思う。人間は日常の生活で大量の湿気を出し、そして臭いも出す。あったかいご飯のようである。更に人間は呼吸をする。日本で住む以上日本の気候の特徴である外気からの湿気もある。断熱・気密された炊飯器の中で電気を使って温度・湿度を管理して暮すのも近代的な感覚で良いが、木の匂いのするなかで、木の持つ調湿性や保温性の中で自然を感じながら暮す方が良いと感じる。感覚的ではあるが、日本の気候や家は第三の皮膚である事を考えると、わたしは炊飯器のような家よりも、おひつのような家に住んでみたいと思う。
現実に家の大きさほどのおひつはできないが、近いものではログハウスがある。ログハウスも確かに良いと思うが、大切なのは「家が呼吸する」と言うことである。ログハウスは外部全面に木を出している為に雨や風を直接受けてしまう。この為に木を保護するペンキを塗る、防水性の高いペンキによっては木の呼吸を妨げてしまい調湿性を殺してしまう。また木の匂いはほのかに匂う程度、森林浴程度の匂いであればリラクリゼーション効果があり、人体にとても良い効果があるのだが、木の匂いが濃すぎるとかえって人体に良くなく、木の精油成分によってはアレルギーになる人もいる。ログハウスは本来、建ててから5年間ぐらいは窓など付けずにそのままの状態で放置する必要がある。それは、木の匂いのこともあるとは思うが、何より木の重みで組上げた丸太が潰れるため、組上げた木を落ち着かせるのに5年間ぐらい放置するそうだ。その後、窓やドアを取り付けたり床を張ったりする。建ててすぐに窓やドアを付けると、丸太が縮んできて開かなくなってしまう。
ログハウスではなく、木の調湿性を活かしたおひつのような「呼吸する家」をわたしは建てたい。
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